はなきうスペース

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『空の青さを知る人よ』は鏡だった(感想のようなもの)

『空の青さを知る人よ』は超平和バスターズ秩父三部作の集大成としてだけでなく、ひとつの映画として本当に素晴らしかった。自分にとって令和元年ベスト作品。

 以下ネタバレあり

 

 超平和バスターズ作品らしく登場人物達はそれぞれ抱えている想いがあり、それらが絡み合って物語を紡いでいく中で作品世界に入り込んでいく。
 そして登場人物達、殊に慎之介とあかねに入り込んだ時に気付くのだ。「ああ、この作品は自分の歩みと重なっている」と。多くのおじさんおばさんが同じ想いを抱いたに違いない(若い子はどうだろうね。それはちょっと気になります)。

 輝いていた何かへの憧れ。少年少女期の熱い想いは、やがて壁にぶつかってしまう(いやそんなの最初から分かってるしとか言うリアリストキッズはいないものとする)。
 日々を生きるために精一杯にあがく中で、夢はいつしか定かなものではなくなる。もちろん「なりたい自分」に向かって邁進し続け、それを叶える人はいるだろう。でもそうはならなかった人が圧倒的大多数ではないかな。それは決してダメなことではない。「夢は形を変えて叶う」ものと信じているし(これを語ると話が逸れてしまうので省略)。

『空の青さを知る人よ』を観ると、諦めるにせよ他の目標を見つけるにせよ、若き日の自分に「こう歩んできた」と胸を張って言えるだろうか? ということを自分に問わざるを得なくなる。
「なりたかった自分」は職業であったり人間関係なものであったり性格や容姿的なものもあるかもしれない。いろんなことがあるだろうが、つまるところそれは「生き様」なんだろうと思う。
 しんのが慎之介と対峙した時の台詞に心打たれたのは、うまくいかなくて思い描いていたものとは違っていたとしても、お前は突き進んであがいてもがきながらでも進んでいるのかい? と突き付けられた気がしたからだ。
 その答えは作品を観る人それぞれにあるだろう。慎之介としんの、あかねやあおいに自分を重ねる人もたくさんいると思う。だから『空の青さを知る人よ』は鏡のような作品と言える。鏡を見てうっとりするかがっかりするか……笑。
 そういった意味では十代で観た人が羨ましい。彼らが十三年後にこの作品を観た時、どんなことを感じるだろうか。

 

 と、めんどくさいことを書いたが、ここからは雰囲気を変えて。
 もうとにかくあおいがいちいち可愛くてヤバかったね笑。中二リリックといい素直じゃないところといい極上のとんがりキャラで最高だった。でも、真っ直ぐで優しいんだよね。泣けるくらいに。自分のことだけじゃなくて、それはお姉さん思いだからで。
 『泣いて……ないし』は本当に沁みるね。
 苦くてもとても素晴らしい時間を過ごすことができた彼女の歩む空は青くあり続けるのだと思えた。彼女は十年後二十年後でも、過去の自分に胸を張って自分の歩みを見せることができるだろうな。

 

 もちろんあかねも素敵だった。ジムニー乗りというだけで好きになっちゃうね笑。松平健演じる新渡戸団吉もツボだった。そしてそして正嗣の恋の行方!も気になる。正嗣に注目してみると作中の言動がなかなか深いんだよね。彼だけでもいい感じの物語になりそうで。あおいが全く気付いていないところが少し切ないが笑。少し未来の正嗣奮闘記のようなSSも妄想してみたり。もしかしたらpixivにでも書くかもなー。

  

 もうひとつ、『空青』は主題歌が素晴らしかった。あいみょんは聴いたことなかったのだけれど良いね。どことなく昭和な雰囲気(吉田拓郎のような)がノスタルジックで過去と現在という作品内容と違和感なく一体化していた。劇中で慎之介が作ったことになっている『空の青さを知る人よ』はもちろん『葵』がとても良い。

 当初はこの曲が『空の青さを知る人よ』として作られたそうだが、なるほどそう言われると夢に向かって揉まれている慎之介が作った曲としてもしっくりくる。同時にやはりタイトル通りにあおいのテーマとしても相応しい。あいみょんやるなあ。
 やっぱり映画って素敵な音楽が欠かせないよね。『空青』は劇伴も良かった。

 

 まだいろいろ言いたいことある気がするけどとりあえずここまで。
 最高過ぎる映画だった。

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相生あおい

秩父行きたい。